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2023.02.17

物理学書『熱力学第二法則と波動力学』、発行いたします。

物理学書『熱力学第二法則と波動力学』(渡辺慧著、井口和基訳)、3月1日付で発行いたします。

本書のもととなる論文は、渡辺慧(わたなべ・さとし)博士によってフランス語で執筆されました。フォン・ノイマンのH-定理の証明を最初に成し遂げた論文です。このH-定理は、ニュートン方程式で記述される古典力学と同様に、量子力学においても物理法則の時間反転に対する可逆性が保証されています。物理法則は、量子力学・古典物理学を問わず、その向きを逆転した運動も可能です。ところが、現実はそれとは異なります。時間は必ず一方向へと流れ、元へは戻りません。熱力学においても同様に、熱は温度の高い方から低い方へ流れるのみであり、逆転現象が起こることはありません。これがエントロピー増大の法則、すなわち熱力学第二法則です。

この法則を、量子力学の基礎概念だけを使って証明するのがフォン・ノイマンのH-定理でした。しかしながら、フォン・ノイマンの証明には不明な仮説がいくつかなされており、万人の納得するものではありませんでした。これを正しく量子力学の基本概念だけを使って導いたのが渡辺慧の論文(本書)です。その際、エントロピーの概念を量子力学の言葉のみで定義しました。従来、このエントロピーはボルツマンの定義(S=klog W)によりますが、この定義を用いず、量子力学系のヒルベルト空間の次元数sで定義することを渡辺慧は提唱したのでした。本書にあるルイ・ド・ブロイの序文は、実にこのことを語っています。

この渡辺慧の研究がもとになり、我が国の伏見康治により量子統計力学という分野が大きく花開くこととなります(伏見康治著「量子統計力学」(共立出版、1967)など)。伏見と渡辺は東大時代の同級生でした。量子統計力学は後に物性理論の土台となります。この理論をもとに我々が近代物性理論と呼ばれるもののすべてが構築されることとなります(ボーズ=アインシュタイン凝縮理論、超伝導BCS理論、場の量子論、固体物理学、半導体物理学、量子光学など)。これらはすべて量子統計理論の上に作られますた。しかし、これらは系が孤立した場合の平衡系の量子統計力学に過ぎませんでした。ところが、渡辺慧の理論には、非平衡系の場合への基礎づけも行われていました。あるいは、そういう未知の系に対してもヒントとなるような概念が定義されていました。現在、渡辺慧が予見していた非平衡統計力学が脚光を浴びています(沙川貴大著「非平衡統計力学」(共立出版、2022)など)。こうした現代物理学の最前線として活発に研究されている分野を、はるか昔(1935年)に人知れず行っていたのが渡辺慧という物理学者でした。

詳細(太陽書房HP内):
https://taiyo-g.com/shousai297.html

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